3Dプリンターならではのカタチ|ラティス構造とポーラス体について

2021年9月22日

3Dプリンターならではの形状として有名なものにラティス(格子)構造というのがあります。更に最近ではポーラス体(多孔質体)といった、従来工法では実際のモノづくりへの活用が難しかった形状や素形材についても、当社のお客様からお問い合わせを頂くことがあります。

今回は、そういった金属3Dプリンターならではのカタチである、ラティス構造やポーラス体の作製方法と課題について解説します。

3Dデータ(STLデータ)

3Dプリンターに入力する造形データを作成する際は、まずは3D-CADデータを作成し、それをSTLデータに変換します。そのSTLデータをROMにコピーしてプリンター本体へ入力します。3Dプリンター業界では、 STL(Stereolithography)データが最も使用されているファイルフォーマットで、当社でもSTLデータを基本として運用しています。

STLデータとは3D-CADソフト用のファイルフォーマットの一つで、3次元の立体形状を小さな三角形(ポリゴン)の集合体で表現します。

したがってSTL形式では曲面を表現できないので、本来曲面になる部分ではモデルの三角形を細かくすることによって曲面に近い形状を作っています。

ポイントとなるのは、STLデータで出力する際の偏差(3D精度)です。この偏差とは、表面を形成する三角形をどこまで細かくするかを決めるパラメーターです。元のCADデータが同じでも、このパラメーターの設定次第で仕上がりが大きく変わってきます。この偏差が粗いと粗い局面になり、偏差を細かくすると滑らかな曲面が出来ます。

一方、細かくし過ぎるとデータ量が大幅に増加し、データの変換に長い時間がかかってしまいます。更に3Dプリンター側では、スライスデータといって、一層ごとの造形データを作成しますが、そのデータ処理時間も長くなります。3Dプリンターでは、一層の造形中に次の層のデータを読み込んで計算・処理しますが、データ容量が大きい場合、計算が間に合わず、装置がダウンしてしまう場合があるので注意が必要です。(最新の装置では、ダウンしにくいよう改善はされているようです。)

ラティス構造の種類

次に、3Dプリンターでどのようにしてラティス形状を造形するのか、造形方法について説明します。

まず当社が製作しているラティス構造は大きく2種類に分類されます。一つは格子ラティス、もう一つはサーフェスラティスといわれるものです。

格子ラティス

一つ目の格子ラティスとは、基本となる格子形状を作成し、それを立体的に並べて造形物を作っていくものです。例えば格子形状で直方体のラティス構造を作りたい場合、XYZ方向に格子形状をコピーしながら作っていきます。

このコピーによる作成では、立方体、直方体、平面など、曲面の無い形状の場合が多くなりますが、格子形状で曲面体の作成も出来ます。専用変換ソフトを利用するのですが、例えばラティスで球体を作成したい場合、最初に格子形状で立方体のデータを作成し、別にその立方体に内接する(含まれる)球体データを作成します。それから二つのデータを重ね合わせる作業を変換ソフトで行う方法です。曲面の表面部分は、格子形状が一部欠落した形になります。

この球体の場合のように、全体をラティス構造にする場合は、データ量が膨大になりますので、格子形状のサイズに注意が必要です。

格子ラティスの例

格子形状の例をご紹介します。

これらの格子形状は、3D-CADデータや、専用ソフトで直接STLデータとしても作成できます。

この格子形状単体でも、曲面がある形状では、曲面を再現するために、データ量が多くなりますので、格子を組み合わせたラティス造形物のデータは膨大な量になってしまいます。

そこで、格子形状の基本形状は変えずに曲面部をなくして直線的に形状を調整するケースもあります。ラティス製品が小型の場合は、曲面がある格子形状と見た目は変わらないものが出来上がります。

サーフェスラティス

次に二つ目のラティス、サーフェスラティスについて説明します。

STLデータの三角形の境界線を利用して、境界線部分のみを造形してラティスを作成する方法です。

同じくSTLデータの三角形を小さくすることで滑らかな球体が出来ますが、データ量が多くなります。

サーフェスラティスの例

これはご覧になった方も多いと思いますが、球体の中に小さな球体を造形した物です。中でカラカラ動きます。

台湾や中国の博物館にもこのような象牙の彫り物がありますが、それを真似たものです。

作り方は、STLデータを造形データやスライスデータに変換するソフトウェアを使います。

上図にある大小別々のラティスデータを作成して、重ねた造形データをつくります。

この造形では、中の球体は浮いた状態になっているのですが、浮いた状態で造形できるのは粉末を焼結体の状態にして造形を行う電子ビーム造形装置です。

レーザービーム造形装置は、宙に浮いたものを造形する場合、必ずサポートが必要になります。このサポートは目が細かいと取り除けません。

したがってレーザービームではこのような造形は基本出来ません。

データ変換・調整ソフト

3D-CADデータの変換ソフトウェアとして、当社ではマテリアライズ社の 3-maticを使用しています。

トポロジー最適化後のデータ調整、設計軽量化等を全てSTL上で行うことができ、メッシュからCADへの再変換も可能です。金属3Dプリント時の設計調整にも使っています。

また、STLデータを、造形データやスライスデータに変換する際、当社では同じくマテリアライズ社のMagicsというソフトウェアを使いっています。

造形物のサンプル

実際に作成したサンプルを紹介します。

格子ラティス

以下は格子ラティスのサンプルです。

左側はラティスで板を作ったものです。ラティス格子の大きさは□1mmほどです。

右側の円筒形のヒートシンクは、放熱効果検討用として造形し、放熱データを採取したものです。

放熱体や導電体部品の素材としては、やはり純銅や銅合金がその他の一般金属などと比べるとかなり有利です。

しかし、一般的なレーザー方式の3Dプリンターで純銅を造形しようとする場合、反射率が大きく、溶融温度に到達しにくいため、造形が不可能となっています。(※特別なレーザー装置を搭載することで造形する技術の開発は進んでいますが、現時点では造形速度や大きさに制約があります。)

当社では純銅を電子ビーム方式の金属3Dプリンターで造形しています。現時点は電子ビーム方式で純銅の造形が出来るのは国内で当社のみで、多くのお問合せをいただいています。

また、レーザー方式の3Dプリンターでも造形できる銅合金が開発・販売されています。左のサンプルは銅合金を使った造形物です。ラティスの最小線径は0.2mmを実現しています。

水冷管の内部にラティス形状を最初から作り込めるのは、金属3Dプリンターならではの加工法です。

サーフェスラティス

次にサーフェスラティスのサンプルです。

サッカーボールでは、表面の三角形のポリゴンの境界線部分のみ造形したエリアと、面を造形したエリアを作ってサッカーボールのように見せています。

材質はTi64で、面の部分を鏡面にしてインパクトのある展示物にしてあります。研磨は協力メーカー様に対応頂きました。

サドルの造り方も同じで、3D-CADでサドルの3Dデータを作成し、それをSTLデータに変換してポリゴンを作成し、表面の境界線のみを造形しています。

良く見ると、全て三角形になっています。

造形時の注意点

ラティス構造作成時の注意点について説明します。

電子ビーム方式の場合

電子ビーム方式の場合、造形後に周囲の仮焼結体を除去することを考慮したラティスの粗さにする必要があります。

以下にもう少し詳しく説明します。

  • 電子ビーム方式の金属3Dプリンターでは、電子(マイナス電荷)を照射するため、金属粉末の帯電防止(飛散防止)のために造形中に予熱を行います。(予熱温度は約1,000℃)
  • 高温の予熱により、溶融温度との温度変化を小さくして、応力変形の防止や残留応力の除去、サポートの削減を可能にしています。
  • その反面、高温で予熱するため、製品の周囲の粉末が仮焼結をしてしまいます。(仮焼結とは、粉末同士が緩く結合した角砂糖のような状態です)
  • この仮焼結体を、造形完了後に専用のブラスト装置を用いて除去しますが、ラティス形状の場合、内部にある仮焼結粉末にブラスト粒が届かず、除去できない場合があります。したがって、仮焼結体を取り除ける程度のラティスの粗さにする必要があります。

レーザー方式の場合

レーザー方式の場合、造形中の応力変形に注意が必要です。

その理由を以下に挙げます。

  • レーザー方式の金属3Dプリンターでは、予熱は行わず、直接常温から粉末を溶融して造形します。
  • 最近の装置には造形底面のプレートを予熱する機能がついていますが、ほとんどは200℃程度までの予熱機能で、電子ビーム方式に比べるとかなり低い温度設定になっています。
  • 粉末が溶融する際のメルトプール温度は、1,000度以上になりますので、溶融部は、急熱・急冷状態となりますので、熱応力変形に注意しなければなりません。
  • その応力変形を防ぐための造形姿勢として、ラティス梁角度を45度以上に設計することが望ましいと言われますが、全てを満足する形にすることはほぼ不可能です。
  • さらに微細なラティス形状の場合、粉末を敷くブレード(レーキ)が、一層下の造形物に衝突して破損・欠落する可能性があります。ブレードは通常SUS等の金属材ですが、こういった場合は、ブレードをゴムやカーボンなどの比較的柔らかい素材のものに変更することで対策を行います。

電子ビーム方式とレーザー方式の金属3Dプリンターでラティス構造を作成する際の基本的な仕様と特徴について以下にまとめてみました。

ポーラス体(多孔質体)

3Dプリンターではポーラス体を製作することも可能です。

金属3Dプリンティングによるポーラス体は、人為的に造形欠陥(未溶融欠陥)を増加させる方法で作製します。

ポーラス体の活用例としては、熱交換器のプレートをポーラス体で作り、ポーラス部に吸水させ冷却効率の向上を図ったり、金型のガス抜き用ベントホールなどに使う例があるようです。

また、3Dプリンターでは必要な部分だけをポーラス体にすることができるという点が従来工法とは大きく異なる特徴です。

具体的には、造形のパラメーターである、出力(Power)、 走査速度(Speed)、走査間隔(Line Pitch)、積層厚(Slice Pitch)を以下の式で計算したエネルギー密度(E)をコントロールすることによって造形物の充填密度(素材の空孔密度)を調整することができます。

ポーラス体の作製事例

前述の方法によって造形時のエネルギー密度を変えて作製したポーラス体の例をご紹介します。

No.1が強いパワー、No.4が一番弱いパワーでの造形です。

その造形物の密度をアルキメデス法にて測定した相対密度を載せています。 結果、パワーが弱いほど粉末の溶融が不足して未溶融欠陥=空孔(ボイド)となることで密度が低くなります。この方法により造形物の任意の場所にポーラス体を作る事が出来るのが、3Dプリンターならでは加工法です。

まとめ

  • 3Dプリンターでは、従来工法ではほぼ不可能だったラティス構造やポーラス体を持つ造形物を作製することができる。
  • ラティス構造の細かな形状は3Dデータ量に注意する必要があり、あまりに大きなデータ量だと3Dプリンターで処理できず、造形できない場合がある。また、造形時にも変形やサポート、残留粉末など、方式毎に注意すべき点がある。
  • ポーラス体は意図的に溶融不良状態を作り出すことで、金属密度をコントロールする方法である。

トポロジー最適化などで活用が期待される3Dプリンターならではの形状であるラティス構造やポーラス体について、試してみたいことなどございましたら、是非ともご連絡ください。お問い合わせをお待ち致しております。

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